同性からの突然の告白。(4)終わりと始まり。

そして、告白されてから初めて彼女と会う日を迎えた。

どんな店がいいですか?と聞かれて、私は彼女の好きなイタリアンを選んだ。
いつもと変わらないやり取り。
何気ない会話が続き、時計の針だけが進んでいく。

ちょっと店を変えようと、少し表通りを歩き、眼鏡と髭が似合うマスターのいる昔ながらの珈琲店に入った。

薄暗い店内。
客は各々の時間を楽しんでいる。

私達は店のおすすめのブレンドコーヒーを頼んで腰を掛けた。

「どういう風に接したらいいか分からないんだけど。」

私ははっきり言うのが怖くて探りを入れる言葉を伝えた。

ここからのやり取りは正直覚えていない。
「誰かを好きになったことってありますか?」
「出逢わなければよかったです。」
そう言われた記憶だけ残っている。
ただ、その場では話が曖昧になって結局解散することになった。

ただ、私の気持ちは解決されていない。
別れた後にLINEで「本当はどう思ってるの?」と聞いたら電話が掛かってきた。

「私はYokoさんのことが好きです。

どういった好きかどうか分からない、と言う言葉に期待してしまうので、はっきりさせたいです。

一緒にいるか、いないかだとしたらどちらですか?」

真っ直ぐな気持ちに足元が揺れる。
ただ、私の気持ちは伝えなければならない。
電話越しにこう答えた。

「じゃあ、一緒にはいない。」

一瞬の沈黙の後、彼女はこう言った。

「それがYokoさんの答えですか?」

本当は一緒にいたい。
チョコレートが好きなのと一緒。
でも、ずっと一緒にいるとチョコレート依存症になってしまう。

そんな気持ちを抱えながら「うん」と答えた。

そうすると彼女はこう言った。

「分かりました。」

彼女は頷き、そのやり取りは終わった。

その後、彼女からLINEが。

「問い詰めるような感じになってしまってごめんなさい。

気持ちには応えられないと言われるのは分かっていたけれど、期待してしまう自分がいてハッキリした答えがほしくて聞いてしまいました。

これからも人として付き合っていきたいして遊びたいです。

でも、私の性格的に近くにいる限り期待してしまいます。

ごめんなさい。
諦める時間をください。

色々と楽しかったです。

では、おやすみなさい。」

 

私は今までの想いを伝えたかったが、彼女を傷つけてしまうんじゃないかと思い、断った理由を全て伝えることはできなかった。

「こっちこそごめんね。私がカメレオンだから、惑わしてしまった。

あなたといると、私はあなた色に染まってしまうから自分じゃいられなくなる。

だからきっと無理が出てしまう。ごめんなさい。

私はこんな自分は誰にも受け入れてもらえないんじゃないかと、心のどこかで思ってる。

だから、好きですって言われて素直に嬉しかった。あなたのことがより愛しくなった。

人に見せたくないところもあなたには見せることができた。

あなたは出会わなければよかったって思うかもしれないけど、私にとって、あなたとの出会いは必要だった。

ありがとう。

またいつか、お互い成長した姿で話ができる日を楽しみにしています。」

こう、返信した。

 

これで終わった。
彼女と関わることはしばらくないだろう。
これでよかったんだ。

そんな思考とは関係なく体は正直である。

背中が締め付けられ、翌日はベッドから動けなかった。

 

人との出会いは必然

きっと、彼女と私にとって必要な出会いだったのだろう。

彼女は自分を誰かに受け入れてもらえる喜びを知り、

私は誰かに受け入れられてもらえるときの安心感を知った。

きっと誰も自分の事は理解してくれない。
だから誰にも受け入れてもらえない。

でも、本当は無条件で受け入れてくれる家族のような人と一緒にいたい。

彼女は私にとってそんな家族のような人の一人だったのだ。

ただ、今はお互いの欠乏感が強すぎて、一緒にいると抜け出せなくなるだけ。
だからきっと無理が出てくる。

次回彼女と会う日は、成長した自分との出会いの日

こんなことを考えていると、恋愛って異性であろうと同性であろうと何も変わらないのだと思う。

相手が自分にとってどんな存在なのか、自分が相手にとってどんな存在なのかというだけ。

ただ、自分の心の穴が深ければ、それを埋めることを何よりも優先してしまい、

相手の本来の魅力を見る前に、穴を埋める存在として認識してしまう。

どちらかが他のもので穴を満たす日が来ると、結局別れる日が来るのだ。

そんな冷静な分析をする自分とは裏腹に、あの時の状況を思い出すと今でも背中が痛む自分がいる。
最後の電話からもう3週間も経つのに。

身体の反応から、いかに自分が人に受け入れてもらいたいかに固執しているのが分かる。

私もいつまでも怖れていないでもっと自分を出していこう。
そうやって怖がってばかりいると、彼女とは一生面と向かって会えないだろう。

 

 

「次回会う日」

 

 

それはいつになるだろう。1ヶ月後なのか1年後なのか5年後なのか10年後なのか、それは分からない。

彼女が変わっているのかいないのか、それは彼女自身の人生だ。
もう、私が関与することはできない。

ただ、その日はきっと、

より成長した彼女と、

そして、

より成長した自分と出会う日。

きっと素敵な出会いの日が来ることを、私は今から心待ちにしている。

Follow me!

同性からの突然の告白。(4)終わりと始まり。” に対して 2 件のコメントがあります

  1. Yu より:

    はじめまして。
    どうして自分のことが?と思うくらい、似たような体験をしました。
    「次回合う日まで」距離を取ることに自分が感じた辛さが、欠乏感という言葉でとてもすとんと腑に落ち、自分自身の心を成長させていかないといけないきっかけを貰ったんだなと感じました。

    「次回合う日」が来たとき、Yokoさんや「彼女」さんが考えられたこと、感じられたことをまた読ませていただきたいです。
    こんなことを言うのは勝手でおこがましいのですが、私も一緒に頑張りたいです。

    ありがとうございました。

    1. Yoko より:

      コメントありがとうございます(^^)
      一緒に頑張りましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です