認められたい。親に。でもそれは間違いだった。(2/2)
後日、またカフェでお茶をすることになった。
彼女は母親に話せたのだろうか。
Contents
親に本音を言って初めて気づくこと
「この間の、どうだった?」
「うん。話してみた。なんかね、少し気持ちが落ち着いた。」
彼女は言葉を選ぶように、近くに目線を動かした。
「もっと定期的に帰った方が良いのかな?この間、『次いつ帰ってくるの?』って言ってたでしょ?って聞いたら、
えぇ?一応行ってみるだけだよ。
まだいいよ。まだみんな元気だし。ありがとう。
あと15年くらい経ったら言うかもしれないけどね。
それに、お父さんとか二世帯住宅はイヤやって言ってるし。
たまに帰ってきたり、また会いに行くからいいよ。
あんた、ほんとよく”気にする”よね。
って。」
「そうなんだ。」
「それにね、今後の話も聞いてみた。
今の仕事、東京で地元に戻るとか今のところ予定ないんだけど、やっぱり何年か後には地元戻った方がいいのかな?
って聞いたら、
うーん、あんたの好きにやったらいいよ。そんな先の事なんて分からないし。
考えすぎじゃない?
そんな先の事より、今ここ数ヶ月くらいのこと考えて、
なんか一歩、社会のために進めるように頑張ったらいいんじゃないかな?
いつも頑張ってるんだろうけどね。
だって。なんか拍子抜け。」
「えー、そうなんや!よかったやん!」
親のイメージは自分の思い込み
「そう!ほんとね!
なんか、勝手に自分の中で”こうしなきゃいけない”っていうのを思い込んでたのかもしれない。
確かに、うちの親は2人とも家にじっとしてることないし、
なんか言うけど、結局は子供の好きなようにやらせてくれるし。」
そう、話している彼女は、前回の思い詰めた表情ではなく、少し安堵感を得た表情担っていた。
認めてもらいたいと思っていたけど、すでに認められている
「あのさ、お母さんが言ってる『一歩ずつ進んでいったら』っていうの、Aちゃんそのものやん。
いつも前向きで、自分の出来ることを探してて、着実に一つ一つ前に進んでる。
みんなすごいなーって思ってるんだよ。」
「そう?自分ではよくわからないけど、そうなのかな?」
「そうやって!お母さんの思いと自然と同じことやってるって。
それがAちゃんにとって当たり前だから気づいてないだけで。
お母さんだって分かってると思うよ!」
「そっか。そうかもしれない、、、。なんか少し安心した。ありがとう。」
ようやく、彼女はホッとした様子で、カフェオレを口に運んだ。
気づくことが最初の一歩
彼女の顔は、完全に、今の気持ちを消化された雰囲気ではなかった。
しかし、自分の思い込みに気がついただけでも大きな一歩だ。
きっと、『認められたい』という思いは彼女の中で、消えないかもしれない。
ただ、その欲求の原因が一つでも分かれば、振り回されることは少なくなってくるだろう。
「受け入れられたい。認められたい。」という想いは自分の親への気持ちから、少なからず出てきている。
親を想う。それは自然なこと。
ただ、彼女の場合はその”親への想い”が強すぎて、”勝手な思い込み”を作ってしまっていたんだろう。
彼女の場合は「そもそも母親からは受け入れられてる。認められてる。」今回、そう気付けたから、その衝動そのものが減ってくるだろう。
避けては通れない親子関係
親と子の関係は、良かれ悪かれ、どんな人間関係よりも強い。避けては通れない関係性だ。
だからこそ、そこに何か引っかかるものがあれば、別のところに”焦り”や”不安”として現れて来る。
ただ、彼女の場合と同様、親のイメージは案外自分が作っていることが多い。
何か過去に印象に残っていることをきっかけに、自分の中での親のイメージをつくりだしている。
最初は本当にちょっとした些細な気掛かりだけだったのに、いつの間にかその種を自分の思い込みで膨らませてしまい、いつの間にか大きな事実として取り扱ってしまっていたということだって少なくない。
ただ、親に本音をいう機会はなかなかないために、その思い込みを払拭する機会はほとんどないだけ。
別のところに現れて来た”焦り”や”不安”を解消しようとしても、親を通じて自分が作り出した幻想に気付かなければ、いつまでたってもさらなる別の現象が現れてくる。
追っても追っても解消されなものがあるのだとしたら、根本的なひっかかりを探してみるのがいいかもしれない。
しかも、そのひっかかりは自分が勝手に作り出したものなのかもしれない。
ひっかかりの代表としての親子関係。
一度、振り返ってよく見てみてはどうだろうか。