認められたい。親に。でもそれは間違いだった。(1/2)
受け入れられたい。
認められたい。
そんな事を思っているなと気づいた瞬間、
自分に腹が立つ。
彼女はふと、そういった。
これは私の親友の話。
いつも自分のことを話さない彼女が切り出したこと
彼女は明るく笑顔が素敵な女性。
周囲によく気を配る、働き者。
そんな彼女と会話をすると、普段自分のことをあまり話さない私も、いつの間にか話をしたくなってしまう。
職場ではそんな彼女を慕う人も多く、周囲からの信頼を得ている。
大人しそうな、柔らかい印象を持つ彼女だが、芯はと強く、結構頑固なところもある。
ただ、気配りができるので、納得がいかないことがあっても周囲の状況に合わせることもしばしば。
それが災いして気苦労が絶えないよう。
いつもは私が話を聞いてもらうが、今日は私が聞き役だった。
認められたいと思う自分に腹が立つ
「最近さ、最近とういうか、前からなんだけど、自分にすごく苛立つときがあるんだよね。」
そう切り出して、彼女は話を続けた。
「私は、受け入れられたい、認められたい、と思う気持ちがすごく強いと思うんだ。
自分が発した言葉とか、ふとした瞬間に湧いて出た感情の端々に、『認められたい』っていう感情が出てくることがよくあって。」
認められたいと思うのは誰でもそう。でも、それを話す彼女は終始うつむき加減で苦しそうだった。
「そんなことを思ってるっていう自分の状況に気づいた時、『あぁ、また認められたいって思ってる』って自分自身に苛立っちゃうんだよね。」
苛立つってどういうことだろう。認めてもらいたいっていうのは誰にでもあることなのに。
「そうなんだ。なんで、苛立つの?」
「なんか、”欲しい欲しい”って、自分が満たされてないような感じがして。」
その言葉に、原因は他のところにあると気づいた。
「それってさ、この人に認めてもらいたいって人がちゃんといるんじゃないの?」
彼女は少し間を置いて、お腹の奥から言葉を引っ張り出すように答えた。
親に認めてもらいたい
「親かもしれない。特に母親。」
「母親?」
「うん。私は両親に感謝してて、大人になったら親孝行したいなって思ってたんだけど、
希望してた地元での就職ができなくて。
親は地元で働いて欲しいって思ってたから、ずっと罪悪感がある。」
そこまで言うと、彼女は涙を流した。
それでも彼女は話を続けようとしている。私は黙ってその時を待った。
「親はいつも、いつ帰ってくるの?って言って、寂しそうな顔をしてるし。
私は『今のところ予定ない』って言うんだけど。
あれだけ大切に育ててもらったのに、私は親を裏切っているだけなんじゃないかって思ってしまう。
ただ、今の東京での環境を捨ててまで、地元に戻る勇気もないし。
親不孝だから、せめて何か他のものでも認めてもらおうとしてる気がする。」
”親不孝”よく聞く彼女と親との関係性から見て、とても親不孝だとは思えない。
実家に帰ったら両親との時間を大切にしているし、仕送りだってしっかりしている。
”地元にいない”ということに固執していないか。
「そっか。私はさ、Aちゃんが親不孝なんて印象持ったことないけど。一回お母さんに今の気持ちそのまま伝えてみたら?」
「そうかな。なんかいうの怖いけど、言ってみたらなんか変わる気がする。一回お母さんに話してみようかな。」
何かを振り払うように、彼女は顔を上げた。
「うん。そうしたらいいやん!」
彼女は頷いた。