「私たちに戦争を教えてください」(フジテレビ番組)の感想
2015年8月15日、終戦後70年特集としてフジテレビで放映されていた「私たちに戦争を教えてください」を見た感想を書きたいと思う。
終戦70年ドキュメンタリー「私たちに戦争を教えてください」(フジテレビ公式サイト)
記者やジャーナリストではなく、今まで戦争というものにあまり向き合ってこなかっただろう若手俳優(小栗旬、松坂桃李、福士蒼汰、有村架純、広瀬すず)が、当時を知る人物を訪ねるという内容。
私も正直、戦争というものに真正面から向き合ってきたことはない。
終戦後70年経過した今、当時を知る人たちは残り少なくなっている。
今年はどの慰霊祭や企画でも「当時の記憶と思いを後世に継承する」といったテーマが多いようだった。
そんな中、当番組も、人気若手俳優を全面的に押し出すことで、私と同世代で戦争を深く知らない人間をターゲットにしており、その番組が何を伝えようとするのか、興味があった。
印象に残ったことを一つ一つ考えてみたい。
戦争は、現代の私たちにとっては想像を絶する状況。
私たちはあくまでも当時を想像することしかできず、同じ気持ちを味わうことはできない。
戦争当時の思いを語る当事者の方々の話、戦争当時の写真や映像。これらは、戦争の悲惨さを表し、目を背けたくなる内容ばかりだった。だが、これらは70年前の今、実際に起きていた事実。日本人も人を殺し、アメリカやその他の国の人も人を殺した、壮大な規模の殺し合いだ。お互いが自身の正義を貫くことで、お互いが罪を犯した。その事実を忘れてはいけないし、二度と戦争をしてはいけない、という先輩方の思いを引き継がなければならない。それは確実である。
しかし、映像を見たところで、”戦争は、現在の私たちにとっては想像を絶する状況”であった。写真や当時の映像を見て、戦争当時の状況を想像することはできるが、あくまでイメージでしかない。テレビを通して見る、白黒写真。70年経って、劣化している当時の物。そして、当時の状況を語る人生の先輩方の言葉。まるで映画を見た後と同じようであった。”私たちはあくまでも想像することしかできず、同じ気持ちを味わうことはできない”。若手俳優の反応も、同様の反応であった。想像することはできるが、完全に理解をすることは難しい、といったような反応だった。私もそう思う。例えば、幸せな瞬間を例に取ると、自分の子供が生まれた瞬間はこの上ない幸せを感じると聞く。しかし、子供を産んだことがない私にとって、なんとなく想像はつくが、本当に理解するのは難しい。というか不可能だ。それと同様に、戦争の状況を体験していない私たちにとって、想像を絶する状況や、当時の心理状況を完全に理解するのは不可能に近い。
当時の日本人は”アメリカは敵。日本は絶対戦争に勝つ。”と信じなければ生きていけない状況。
その中でも、当時の状況を想像してみる。当時の軍人や市民の人たちは、何かを信じなければ生きていけない状況だったのだろう。白か黒か。グレーは許されなかった。グレー=黒だった。”黒=敵”と見なされる。その中で、天皇陛下万歳と想い、白を掲げること以外には選択肢は無かったのだろう。現代ではインターネットを使って世界中の情報を得ることができ、様々な情報を得ることができる。しかし、当時の情報源は新聞とラジオで情報発信は一部の人間によって行われていた。そのため、市民はその情報を信じるしかなかった。しかも、日本人にとって無くてはならない存在の天皇が語る言葉の影響力と言ったら計り知れない。
私が当時の人間だったら、当時の人と同様の思いを抱えて戦争を支援しただろう。
戦地へ行く男達を送り、なんとか戻ってきてほしいと願い、目の前にいる間は幸せな時を過ごしてほしいと願い、空襲に合えば他人より家族の身を案じ、なんとか自分の家族だけでも生き延びたいと願っただろう。その中でも”日本は絶対に戦争に勝つ”と信じなければ、生きていけなかっただろう。それしか家族の命が助かる選択がなく、亡くなった人たちが死んだ意味がなくなると考えたと思う。戦争によって自分と同じ人間が死ぬかどうかはその次で、まずは自分と家族が生きるかどうか、それしか考えられなかったと思う。それしか心の支えがなかったと想像する。だから、私も当時生きていたら、間違いなく戦争支援者になっていただろう。
今回、この番組を見て、想像を絶する当時の状況を少し想像することができた。戦争について日頃考えることのない私にとっては良いきっかけを与えてくれる番組だった。人気若手俳優が出演していなければ、この番組は見ていなかったかもしれない。その点、導入についてはよかったと考える。今回、戦争は想像を絶する状況であったということが全面的に出ていた。欲を言えば、その状況を踏まえて、若手俳優達に”今後、日本が、私たちが戦争を起こさないためにはどうすべきか”というテーマでディスカッションをして欲しかった。いざ、戦争をするかどうかについての選択が迫られた時、日頃戦争について考えていない私たちは即座に答えが出るだろうか。正しい選択ができるのだろうか。何事も準備運動が必要。人気若手俳優のような若者に影響力のある人物達が戦争についてディスカッションをすれば、戦争について考えることが”かっこいい”という認識が与えられ、若者達も”戦争を知る”ことから”戦争について考える”ことに繋がると思う。それが、本来求めるべき姿ではないだろうか。
と言うことで、戦争について一人ディスカッションした内容はこちら
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sun.rikejo@gmail.com
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