炊飯器再稼働。彼の魅力を思い出した。
リケジョの嫁こと「みっけ」。
人に話すと「猫?」と間違われるが、れっきとした人である。
いつの間にか周囲を包み込む癒し系の女性。
みっけがウチに来てからは驚きの連続である。
みっけがウチに来てから2日もしない程度で、私は家を4日間空けることになる。
ひとまず、家の中の説明をし、近所のスーパーやらゴミの日やらの生活に必要な情報を伝えて私は家を後にした。
家を空ける際、みっけが持たせてくれたのが「牛肉なんちゃらふりかけ(正式名称は覚えていない)」を混ぜ込んだ”おにぎり”。
なんと!!
こんな自然におにぎりが出てくるなんて!!!
しかも、炊飯器を稼働させたのはいつぶりだろう?
いつも朝に家をでるときに時間を確認するためだけにあるような炊飯器。
確認するため”だけ”と言ってしまったが、ウチにある時計の中で一番優秀な炊飯器。
基本的に時間がズレることなくピッタリ時を刻んでいるのでとても感謝している。
特に朝の忙しい時間帯、会社を出るまでに分刻みのスケジュールをこなしているが、その時に何度彼を見ることか。
しかし、きっと時間表示だけの人生を不本意に思っていたに違いない。
いつのことだろう、私も一時期は炊飯器でお米を炊くのにハマった時期があった。
「炊飯器で炊いたお米って、なんておいしいんだろう!」
と白いご飯だけを何杯も食べた日を思い出す。
お米が美味しすぎて、そのころはしばらく「雑穀」をお供に、雑穀米とお味噌汁だけの生活をしていたこともあった。
あの頃は、彼の素晴らしい魅力に心を奪われていたのに、
東京に出てきた時に真っ先に買った炊飯器。
いつからだろう、
こんなにも身近にいるのに、彼の本当の姿が見えなくなってしまったのは。
自分自身のことでいっぱいいっぱいになり、いつの間にか、「おいしいご飯を炊く」という本来の姿ではなく、表面上の「時計」の部分しか見ていなかった。
出先でみっけの愛情が詰まったおにぎりをほおばりながら、炊飯器の白い姿に想いを馳せる。
こんなにもおいしいご飯が炊けるのに、忘れていたなんて。
そもそも、その機能を求めて出会ったのに。
ちょっと見方を変えたら気づいたのかもしれない。
でも、今までの私にとっては「時計」でしかなかった白い塊。
彼の本来の魅力をみっけのおかげで思い出すことができた。
みっけ、ありがとう。
帰宅後、朝の時間帯にいつも通りに炊飯器の時計に目をやるが、
そこには時刻ではなく、「保温5時間」の文字が表示されていた。
本来の姿に戻ってしまって、少し寂しい気持ちもあるが、
やっぱり、炊飯器は湯気を出して、おいしいご飯のために働いている姿が似合う。
つづく。